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全国でも老舗の昆虫同好会・静岡のチョウ博士、清邦彦さんが、今年も鱗翅学会に出かけた。
*日本鱗翅学会 http://japan-inter.net/insect/org/lsj/

北上が心配な「クロマダラソテツシジミ」を、仕事中、昼食に出かけて見かけた在野の会員が、
会社にとって返して「大変なものを見てしまいましたので、今日は早退します」と退社して、調査した話など、
相変わらず、いろんな意味で面白い話が多かった。

その中で、
アリとアブラムシとの話を記事にした私としては、さらに、生物間の関係の複雑さに舌を巻く話が。

落ち着いて、ついてきてほしい。

まず、オオバギという植物は、アリを住まわせる。
植物なのに、自分の葉をムシに食べられないように、アリにとっておいしいものを作り出して食べさせる。
また、アリが住みやすいように、茎を空洞にしている。

ここで、もう驚く、でしょ?
こういう植物をアリ植物と呼ぶらしい。

さてアリは、植物と共生関係にあるのに、さらにご存知アブラムシの一種カイガラムシを放牧して蜜を得る。

地球はアリの惑星といって良いほど、ヒトの目に見えるサイズでは
その種、数、生態系への関与も、アリの独壇場だ。
アリも、植物も、アリと関係を結ぶムシも、お互いを大事にしてきたあまり、
一種の木に一種のアリ、一種のカイガラムシ、と、種ごとに進化し、まずます密接な関係に育った。

この関係を、早くから見逃さなかった虫がいる。
それが、ムラサキツバメというシジミチョウだ。

通常なら、幼虫は葉を食べるので、オオバギの守護をするアリにやられてしまう、はずなのだ。
しかし、ムラサキツバメの幼虫は、まるでアブラムシのように、体から蜜をひねり出すことに成功した。
こうして、無事に葉を食べながら、アリと共生関係に。。。と思ったら、
蜜が出るので、アリは幼虫を巣へ運び、エサまで与えて育てるのだという!
そうして、アリの巣で、といってもオオバギの用意した巣で蛹になり、ある日、舞い立つ。

示唆的な話でもある。
特殊な関係の中でそれぞれに発達してきた生き物の種は、どれかがダウンすることで、
総崩れになるデメリットも負う。
手を出してはいけないバランスが、そこにあったりもする。

私たちの経済も、世界も、危ういバランス関係の中にある。
しかもそれは、相互の信頼の上に建っている。
一番下の基本のキ、いったいどういう風に生きてゆくか、そこの見直しからするしかない。




トウダイグサ科オオバギ属(Macaranga)のアリ植物種は,
植食者に対して防衛効果をもつ種特異的なアリ種に巣場所と食物を提供することによって,
そのアリと共生し,相利的な相互関係を結んでいる.
そうした共生アリの対植食者防衛にもかかわらず,
シジミチョウ科ムラサキツバメ属(Arhopala)の一部を構成するamphimutaグループに属する種の幼虫が
アリ植物オオバギを寄主植物としていることが知られている。
◎好蟻性植物オオバギ属を食餌植物とするムラサキツバメ属の幼生期と生態

http://ci.nii.ac.jp/naid/110007133036/


アリ植物-アリ-カイガラムシ-チョウの四者間共進化
東南アジア熱帯雨林のマカランガ属植物26種は
体内に特殊な共生アリと共生カイガラムシをすまわせている.
これまでの我々の研究からマカランガと共生アリの間には
ほぼ1種対1種の特異的な関係がむすばれ,
両者はここ約700万年にわたって共進化(共多様化)してきたことがわかってきた.
現在,共生カイガラムシおよび植食性昆虫も含めた四者間共進化について研究している.


オオバギという木は、幹の内部に凶暴なアリをすまわせています。
このアリは植物を食べに来る昆虫を撃退します。
そのお返しに植物は栄養体とよばれる粒を分泌してアリに与えます。
さらに、アリは巣内でカイガラムシという昆虫を「放牧」しており、
それが排泄する甘露も餌にしています。
この三者のDNA 解析から、オオバギ植物29 種、共生アリ17 系統、共生カイガラムシ6 系統は
種と種が緊密に関係しながら,約1600 万年にわたって進化・多様化してきたことがわかってきました。
アリは生態系で非常に重要な役割を果たしています。
このため地球上にはアリと友好関係をむすんだり、アリに寄生したりする生物がたくさん進化してきました。
例えばアリに甘露を与えるアブラムシ類や、
アリの巣へ入り込んでアリの幼虫を食べるチョウの幼虫などです。

生物の共生と共進化を探る
◎市野研究室 信州大学
http://science.shinshu-u.ac.jp/~bios/Evo/itino/index.html

オオバギ-シリアゲアリ系では、1種のアリ植物は、
その種のみあるいはその種の近縁種を含む少数の種群のみに特殊化した1-2種のシリアゲアリ種と
共生関係をもつことが分かっており、高い種特異性が創出・維持されている。

◎オオバギ 沖縄花図鑑
http://www.geocities.jp/michi_kba/kiro/o-bagi.html

◎オオバギ 沖縄植物図鑑
http://qjy.web.infoseek.co.jp/okinawaplants/toudaigusaka/oobagi.htm

◎オオバギの茎にアリが住む写真 節政博親のネイチャーフォトギャラリー
http://www001.upp.so-net.ne.jp/sylvaphile/7-symbiosis.html

◎東南アジアにおけるオオバキ属植物とアリの共生系 KAKEN
http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/10041163

◎リストラされる共生者 ~アリ植物オオバギの成長に伴う共生アリ量の減少~
日本生態学会 大会講演要旨09.03
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PB1-242.html